地域と大学をつなぐ教育実践の可能性― 持続可能な関係性構築に向けた多角的アプローチ―


地総研共同研究プロジェクト中間報告会開催

域総合研究所では令和6年度から「持続可能な地域連携」をテーマに、6名の所員が共同研究プロジェクトに取り組んでいます。
令和7年3月18日(火)鹿児島国際大学 伊敷キャンパスで研究成果中間報告会を開催。各研究の進捗状況を共有するとともに、ピアレビューすることで、今後の研究に磨きをかけます。

研究発表①「DIPLOMA POLICYとFIELD WORKが交差するところ ―卒業生の理想像を探って―」

報告者:アイリッシュ ジェフリー 経済学部教授(地総研所長)

研究は、大学のディプロマ・ポリシー(卒業時に備えるべき能力)とフィールドワーク(実践的学習)の関係性に注目しながら、学生教育のあり方を問い直す試みである。とりわけ、看護学部のディプロマ・ポリシーが他学部に比して豊富かつ具体的であることを手がかりに、「課題解決力」だけではない「地域の良さの発見」も重要視すべきとの指摘がなされた。

 学生・教員・地域それぞれのフィールドワークに対するニーズの違いに着目し、その「すり合わせ」の必要性も提起された。また、教員側の学びの場の希薄さや、制度面での課題にも触れ、制度整備と対話の必要性が浮き彫りとなった。

研究発表②「地域経済を持続可能な社会にしていくためには何が必要か」

報告者:平出 宜勝 経済学部准教授

観光動態のデータ分析を踏まえ、研究テーマは「持続可能な地域経済の構築」にシフト。北海道夕張市を例に、鹿児島県日置市の現状について、地域の自主財源の少なさや人口減少といった「負のスパイラル」を克服するため、観光と輸出産業の育成が鍵であると論じた。中でも、「基幹産業」と「基盤産業」の違いを明確にし、域外から収入を得る移出・輸出産業の重要性を強調。また、産業クラスターの視点から、特産品と関連産業の連携による地域経済の強化にも言及した。

 学生とともに現地企業を訪問し、輸出に対する課題や可能性を探ることで、教育的意義と地域貢献の両立を目指している。

研究発表「企業と地域の持続可能な連携―チームの多様性と同質性がフィールドワークに及ぼす影響―」

報告者:樋口 晃太 経済学部講師

本研究は、経営組織論を大学教育のフィールドワークに応用し、学生チームの多様性が活動成果に与える影響を探るものである。MBTI診断を用い、性格の異なる学生を組み合わせたチームと、同質的なチームの比較実験を実施。創造性、満足度、心理的安全性などを評価指標に据え、実証的な分析を進めている。企業組織との違い(活動時間、メンバー構成、役割分担の有無など)を整理しつつ、フィールドワークにおけるチーム編成のあり方を再考する視点を提示。今後は、定性的なインタビューを加えて、より深い考察を行っていく予定である。

総括

三つの研究はいずれも、「持続可能な地域との関係性構築」という共通の問題意識を持ちつつ、それぞれ異なるアプローチから課題に向き合っていた。アイリッシュ所長は教育理念と制度、平出所員は経済と政策、樋口所員は組織と実践の観点から、フィールドワークを基軸に多角的な問題提起を行っている。
 本報告会は、地域と大学、そして学生をつなぐ教育実践のあり方を多面的に見つめ直す貴重な機会となった。それぞれの研究が互いに補完し合う形で展開され、実り多い意義ある時間となった。今後の展開が期待される。
 川﨑所員、稻留所員、内山所員の発表は次回所員会議(4月21日)で行う。