大学教育は何を目指すのか

令和6~7年度 共同研究プロジェクト 研究報告

大学は、何を育てる場所なのか。
ディプロマポリシーという“大学教育の設計図”を手がかりに、教育と地域連携をどのように結びつけていくのか。アイリッシュ・ジェフリー教授は、鹿児島国際大学の事例から、学生の成長と地域との関わりを支える大学教育のあり方を考察する。

「Toward the Realization of Diploma Policy Goals: A Consideration of the Case of the International University of Kagoshima(ディプロマポリシーの目標実現に向けて:鹿児島国際大学の事例に関する考察)」

アイリッシュ ジェフリー 経済学部 教授

大学は、何を育てる場所なのか

本報告は、大学教育におけるディプロマポリシー(※学位授与方針、以下DP)の役割に着目し、それを通じて地域連携を持続的に発展させる教育のあり方について検討するものである。

ジェフリー教授は近年、フィールドワークを中心とした教育研究を進める中で、フィールドワークの目的や意義が学部・学科によって大きく異なることに気づいたという。その過程で、大学教育全体の方向性を示す枠組みとしてディプロマポリシーの重要性に着目し、DPの目標をどのように教育実践の中で実現していくかを本研究の主要テーマとした。

地域連携を持続させる「二つの視点」

報告では、大学と地域社会の連携を持続可能にするための二つの視点が提示された。一つは大学組織としての産学官連携やフィールドワークなど、在学期間中に行われる地域連携である。もう一つは、卒業後の人生を通じて学生が地域社会に関わり続ける長期的な関係である。本学では学生の約93%が鹿児島県出身であり、卒業生の約76%が県内に就職していることから、大学教育が地域社会の将来を担う人材育成に大きな影響を持つことが示された。

学生は大学生活の何によって成長するのか

本学のディプロマポリシーは、主体的な課題解決力、意思形成と伝達能力、適切な判断力、学び続ける意欲、多文化理解と他者尊重の姿勢という五つの能力を柱としている。教授のゼミでは特に主体的な課題解決能力、学び続ける姿勢、他者理解を重視している。また学生調査の結果、成長要因として挙げられたのはフィールドワークだけでなく、アルバイトやサークル活動、インターンシップ、家族や友人との対話など、大学生活全体の経験であることが明らかとなった。

ディプロマポリシー実現に向けた大学への提言

さらに、ディプロマポリシー目標の実現に向けて、新入生へのDP説明、教員研修の実施、フィールドワーク環境の整備、教員交流スペースの設置、地域ニーズの把握、外部講師の活用など九つの提言が示された。これらは学部を越えた教員コミュニティの形成と大学と地域の交流機会の拡大を意図したものである。

カリキュラム全体で学生を育てるという考え方

質疑応答では、看護学部のディプロマポリシー策定の事例が紹介された。看護学部では医療・看護の地域課題を分析したうえでDPを設計し、各学年の到達目標や科目の役割を教員全体で共有しているという。これに対しジェフリー教授は、各科目がディプロマポリシー達成にどのように貢献するのかを教員が自覚し、教育課程全体で学生の能力育成を支える仕組みを構築することが重要であると指摘した。今回の報告は、ディプロマポリシーを基軸とした教育設計と地域連携のあり方を再考する契機となるものとなった。

アイリッシュ ジェフリー 
Jeffrey S. IRISH

経済学部 教授

専門分野・研究キーワード

社会学・民族学・地域に深く入り込み、地元の暮らしを体験しながら研究するスタイルを大切にしている。

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